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地球への旅
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ダニーロ・クレメントーニ

地球への旅

アザキスとペトリの冒険

イタリア語(原版)タイトル:Il ritorno

訳:大森佳子


本書はフィクションです。本書内で言及される人名、名称、キャラクター、地名、組織は原作者による想像の産物であり、物語に真実味を与えるためのものです。実在の出来事や人物(現在存命であるか否かを問わず)に類似した言及があるとしても、それは純粋に偶然によるものです。

地球への旅(Il ritorno)

Copyright © 2013 ダニーロ・クレメントーニ(Danilo Clementoni)

初版(原版):2013年11月発行

日本語版初版:2017年7月発行

日本語版翻訳者:大森佳子

自費出版・印刷

facebook: https://www.facebook.com/danilo.clementoni

ブログ: dclementoni.blogspot.it

e-mail: d.clementoni@gmail.com

無断転載禁止。本出版物のいかなる部分も、編集者の書面による許可なく、機械的・電子的手段を含むいかなる手段によっても複製することを禁じます。ただし、レビューの目的での短い部分的な抜粋はこの限りではありません。

私の物語をより良いものにし、私自身をより良い人間にする助けとなる貴重な助言をくれた、忍耐強い我が妻と息子にこの本を贈ります。

尽きることのない支援を提供し、この作品を完成させるよう励ましてくれたすべての友人に、特に感謝します。彼らなしに、光を見ることはなかったでしょう。

本作品の日本語版への翻訳に情熱を持って取り組んでくださった、大森佳子女史に感謝します。

「我々は今、再び地球へと向かっていた。あの惑星から急いで去ることを余儀なくされて以来、この星では、一太陽年しか経っていない。しかし、地球では3,600年もの歳月が流れていた。

我々は、そこで何を目にするのだろうか?」

イントロダクション

シュメール人の間ではニビル(交差する惑星)と呼ばれ、バビロニア人にはマルドゥック(天の王)として言及される第十二番目の惑星は、実際には3,600年の周期で私たちの太陽の軌道上を公転している天体である。その軌道は大きな楕円を描いており(他の惑星とは逆方向に太陽の周りを公転)、太陽系に対し著しく傾いている。

周期的な接近が繰り返される度にほぼ毎回、太陽系で大規模な惑星間の大変動が起こり、太陽系を構成する惑星の軌道と構造に影響を与えてきた。火星と木星の間に位置し、現在の地球の約九倍の質量を持ち、その豊かな水で十一の衛星に恵みを与えてきた荘厳たる惑星ティアマトは、ある時の激しい大変動の際、激しい衝突により破壊された。ニビルの周りを巡る七つの月のうちの一つが衝突し、巨大なティアマトは真っ二つに割れ、割れた天体の二つの破片はそれぞれ軌道をはさんで正反対の方向へと投げ出された。その次に起こった変動(創世記では「二日目」)では、ニビルの残りの衛星がこの破壊に追い打ちをかけ、前回の衝突で生じた二つの破片のうちの一つを完全に消滅させた。この時、複数の衝突により生じた残骸が、現在「小惑星帯」、あるいはシュメール人が言うところの「砕かれた腕輪」として知られているものである。この残骸の一部は近くに位置していた惑星に吸収された。特に、木星は残骸の大部分を取り込んだことで、その質量を著しく増加させた。

ティアマトの残骸を含め、この惨事により衛星が残した遺物の多くは軌道外に放たれ、私たちが現在知るところの「彗星」となった。二度目の大変動で破壊を免れたもう一方の破片は、今では火星と金星の間の安定した軌道上に位置し、最後に残った衛星と連れ立って公転している。これが現在の地球と、その切っても切れない友、月である。

約四十億年前の宇宙衝突の爪痕は、今でも部分的に見てとれる。その爪痕は完全に水で満たされ、現在では太平洋と呼ばれている。太平洋は地球の表面の三分の一を占め、1億7900万平方メートル以上にわたって広がっている。この広大なエリアには事実上、大陸はないものの、陥没は深く、その深さは十キロメートル以上にも達する。

現在、ニビルの構造は、地球と非常に似通っている。三分の一は水で覆われ、残りの部分には、合計面積一億平方メートル以上の一つの大陸が南北に伸びている。何百、何千年もの間、その近さ故、ニビルの住人らは私たちの惑星を周期的に訪れ、その度に文化、知識、技術の発展、そして人類の進化そのものにも影響を及ぼしてきた。先人達はこの訪問者を様々な名前で呼んできたが、いつの時代にも最も的確に彼らを言い表してきた言葉は「神」だろう。

宇宙船シーオス ― 木星より1,000,000キロメートル

アザキスは暗い色合いの自動形状形成肘掛け椅子の上で気持ちよく伸びをした。年老いたクラフトマンの友人が初めての惑星間ミッションの際に自作したその椅子を、数年前に贈り物として譲り受けた。「この椅子はツキを呼び寄せるんだ。必要な時は、リラックスして適切な判断を下すのを助けてくれる」椅子を譲る時に、老クラフトマンは言った。確かに、この椅子に腰かけながらいくつもの判断を下してきたし、たいていの場合、運は彼に味方した。この椅子に腰をかけると、いつもその時のことを懐かしく思い出した。ただ、椅子に腰かけるのを妨げるような規則がいくつもあり、特に今乗船しているこのボウセンIカテゴリーの宇宙船にはそのような規則が多かったが。

まだ目的地からは遠く離れた4.2 AU1 の距離を目でたどっている間、右手の親指と人差し指の間にはさんだ葉巻から、かすかに青みがかった煙が一筋、すっと垂直に上がった。この旅を始めて数年になるが、周囲の宇宙の暗闇と、その中にきらめく幾千もの星の魅力は今でも彼の心をとらえた。目の前にある大きな楕円形の開口部から、進行方向にあるものを完全に見渡せた。このごく薄い力場が惑星間の空間の寒さから自分を保護し、空気が急激に漏れ出して船外に吸い出されるの防いでくれていることに、未だに驚かされる。下手したら、即死だ。長い葉巻をすっと軽く一服し、手元のホログラフィー・ディスプレイに視線を戻した。疲れきって髭の伸びた旅の連れ合いの顔が見える。船内の別の場所では、ペトリが排出ダクトの制御システムの修理にあたっていた。慰みに、今吸った煙をディスプレイに吐きかけて波のようにくゆらせ、画像の真ん中を歪めてみる。エキゾチック・ダンサーのしなやかな動きを思いだす。勤務からようやく解放されて生まれ故郷に戻り、いくらか休息できる時間がもてると、よくそのダンサーのところに通ったものだ。

じきに三十二歳になる友であり旅の連れ合いでもあるペトリにとっては、この種のミッションは四度目だ。ペトリに会ったことのある者は皆、その大きな堂々とした体格に否が応でも畏敬の念を抱く。宇宙の闇のように黒い瞳、肩にかかったぼうぼうの長い髪、ほぼ二メートル三十センチの長身、そしてネビル2 の成獣を軽々持ち上げられる力強い胸板と二の腕を持ちながら、幼子のような心を持った男。太陽の光の中にソール・フラワー3 が咲いているのを見ては心打たれ、サラーン湾4 の象牙色の海岸に打ち寄せる波を飽きもせず何時間も座ってうっとりと眺めていられる。感嘆すべき人間、信頼が置け、誠実で、必要とあらば、一瞬もためらうことなく自分の命を投げ打つことさえできる、そんな男だ。ペトリがいなければ、この旅に出ることもなかっただろう。アザキスにとって、決して裏切ることのないこの男は、盲目的に信じることのできるただ一人の人間だった。

太陽系内の航行に合わせて調整された宇宙船のエンジンが、昔ながらの頼もしい二相の唸り声をあげた。熟練者として、その音が宇宙船が順調に機能していることを意味することが分かった。聴覚の鋭い彼は、高性能の自動制御システムが感知するよりずっと前に、調整室内のわずか0.0001ラッシグ単位の音の変動を聞き分けることができた。まさにこの能力により、この若さでペガサス級の宇宙船の指揮を任されていた。

この地位に就けるのならどのようなことでもするという人間は星の数ほどいたが、選ばれたのはアザキスだった。

眼球内に埋め込まれたオーコムが、目の前にある距離を具体的に割り出すため、航路を再計算した。このたった数ミクロンの物体が果たす機能には、感嘆させられる。視神経に直接挿入されたオーコムは、制御コンソール全体を見渡せるよう、今実際に見ている風景に制御コンソールの画像を重ねることができる。はじめのうちは、その魔法のような機能に慣れるのは容易なことではなく、一度ならず御しがたいほどの吐き気に襲われたこともあった。でも今では、これなしには仕事ができない。

雄大な美しさをたたえている太陽系全体が、アザキスを取り囲んで一斉に回っている。巨大な木星の近くにある小さな青い点は、彼らが今乗っている宇宙船の位置、以前のラインよりわずかにカーブした新しいラインを描きつつある赤い細い線は、地球へ向かう新たな航路を示していた。

太陽系最大の惑星の引力には注意が必要だ。安全な距離を保つことが絶対的に重要であり、シーオスがその死の抱擁から逃れるには、二基のボウセン・エンジンのみが頼りだ。

「アザキス」目の前のコンソールに取り付けられた携帯通信装置から、しわがれ声が聞こえてきた「第六コンパートメントの連結器の状態をチェックする必要がある」

「まだやっていなかったのか?」相手を怒らせるのを承知で、戯れに言ってみる。

「その臭い葉巻を捨てて、こっちに来て手伝えよ!」ペトリが怒鳴った。

そう来ると思った。

今やっていたことを、大いに楽しみながらも手早く終わらせた。

「今行く、今そちらに行く。もう向かっているところだ、友よ。そんなにかっかするな」

「早くしろ。俺は四時間もこのクソ仕事を続けてるんだぞ。冗談を楽しめる気分じゃないんだ」

ペトリは相変わらず不機嫌な口調で言ったものの、結局は、何があっても、また何者も、彼らを分かつことはできないのだ。

アザキスとペトリは子どもの頃からお互いを知っていた。ペトリ(子どものうちから、他の子どもによりもずっと体格が良かった)はアザキスがいじめっ子にぶちのめされそうになっているところを一度ならず助け、その大きな体を武器に、アザキスと、彼を頻繁にいたぶるいじめっ子グループの間に割って入った。

少年の頃、アザキスは魅力的な異性が自分を取りあうほどの男に成長するとは思えなかった。いつもだらしない身なりをした、丸刈りのガリガリの少年で、常にGCS5 にアクセスして、皆の十倍のスピードで膨大な量の情報を吸収していた。十歳にして、ずば抜けた成績により、同年代の子ども達の大部分にはまだ許されていない知識を得ることのできるレベルCのアクセスを許可された。ただし、この種のアクセスを可能にする、神経に埋め込まれたノーコムには、いくつかの軽度な副作用があった。情報を得る段階では100%の集中力を要する。多くの時間をこのために費やしていたので、アザキスは大抵、あらぬところを見つめ、周囲で起こっていることから隔離され、うつろな表情をしていた。事実、長老達の見解にもかかわらず、彼は周囲の人々からは少し知能が遅れているとみなされていた。

アザキス自身は、それを気にしたことはなかった。

彼の知識への渇望はとどまるところを知らなかった。夜間でさえ、絶えずノーコムに接続していた。睡眠中は、絶対的な集中力を必要とする知識獲得の能力は1%(この1%でどのような知識が獲得されているかは未知である)にまで低下したが、人生のうち、一瞬たりとも自分の文化的素養を発展させる機会を逃したくはなかった。

アザキスはかすかな笑みを浮かべて起き上がり、友の待つ第六コンパートメントに向かった。

惑星地球 - イラク、テル・エル=ミカイヤル

エリサ・ハンターは、額のいまいましい汗の粒を今一度拭おうとした。汗は彼女の鼻をゆっくり伝い、熱い砂の上に落ちようと決めてかかっているようだ。もう数時間も砂の上に膝をついて作業していた。なくてはならない仕事道具であるマーシャルタウン社製のこて6 で地面をやさしく掻き、墓石の上部のように見える砂の中に埋もれた物体を傷つけないように掘り出そうとしているところだった。しかし、当初からこの理論については確信を持てずにいた。エリサはウルのジッグラト7 近くでほぼ二ヶ月にわたり作業を続けていた。彼女は考古学者としての評判とシュメール言語についての専門知識により、ここでの発掘活動が許可されていた。二十世紀に始まった最初の発掘活動以来、いくつかの墓が発見されていたが、そのうちのどれでも、このような遺物は見つかっていなかった。四角い形とかなりの大きさがあることから、石棺というよりも、ある種の器の「蓋」のように思われた。何千年も前に、何かを保護する、または隠すために、そこに埋められた物。

残念ながら、今のところ上部のほんの一部分が露出しただけで、その下に埋まっている器全体の高さがどれほどなのか、まだ見当もつかなかった。蓋の露出している表面を覆うようにびっしりと彫られた楔形文字は、これまで見たことのあるもののどれにも似ていなかった。

解読するには何日もかかり、幾夜もの眠れない夜を過ごすことになるだろう。

「ハンター博士」

エリサは顔を上げた。右手を目の上にかざして日の光を遮りながら目をやると、助手のヒシャムが彼女のほうに急いでやってくるのが見えた。

「教授」ヒシャムは繰り返した。「基地から呼び出しです。どうやら緊急のようです」

「分かったわ。ありがとう、ヒシャム」

エリサは有無を言わさず割り込んできた休息を利用して、いつもベルトに下げて持ち歩いている魔法瓶から、ほとんど沸騰するほど熱くなった水を一口飲んだ。

基地からの呼び出し……それが意味することはただ一つ、何かまずいことがあったということだ。

エリサは立ち上がり、ズボンに付いた砂を払い、調査の基地になっているテントに向かってしっかりとした足取りで歩きだした。

彼女はキャンバス地の野外テントの半ば閉じているチャックを開け、中に入った。目が暗さに慣れるまで少し時間がかかったが、ジャック・ハドソン大佐の顔がモニターに映っているのは否が応でも見えた。いかめしい顔で空を見据え、画面の向こう側で、エリサが映し出されるのを待っていた。

大佐は公式にはナーシリーヤを拠点とする戦略的反テロリスト部隊の責任者ということになっていたが、彼の本当の任務は秘密裏の組織であるELSAD8 部門が委託・監視する科学的調査プログラムをコーディネートすることだった。ELSADはこの種の組織のすべてを統括する、常に謎に包まれた部門であり、その正確な意図と目的を知る者はごくわずかしかいない。唯一確かなことは、指揮系統が合衆国大統領に直属しているということだった。

エリサはそれは全く重要視していなかった。この探査への参加を承諾した本当の理由は、彼女が世界で最も愛してやまない場所へようやく戻り、好きな仕事ができるからだった。三十八歳という比較的若い年齢にもかかわらず、彼女はこの分野の研究では最も成功した科学者の一人だった。

「こんばんは、大佐。どのようなご用件で、お目にかかる光栄に預かれたのでしょうか」彼女はありったけの笑顔をつくって言った。

「ハンター博士、愛想を振りまかなくても結構。呼び出した理由は分かっているはずだ。君の任務の完了期限は二日前に切れた。これ以上の滞在は許可できない」

大佐は決然たる口調で言った。今回ばかりは、エリサの抗しがたい魅力をもってしても、これ以上の延期は無理そうだ。最後の切り札を使うしかない。

2003年3月23日に大量破壊兵器保有(後に、実際には保有していないことが明らかになった)とイラク国内でのイスラムテロを支援しているとの告発を受けた独裁者サダム・フセインを権力の座から降ろすことを明確な目的として合衆国率いる連合軍がイラクへの進攻を決定して以来、平時にさえすでに困難であった考古学研究のすべてが後退を余儀なくされた。2003年4月15日の正式な停戦は、地球上の至る所に文明が広がる前に人類史上最古の文明が発達した地に再び立ち入ることができると、世界中の考古学者の心に希望の火を灯した。2011年末にイラク当局が下した、「我が国の文化的遺産を引き続き強化する」ために、計り知れないほど歴史的価値の高い複数の現場での発掘を再開するという決定は、ついにその希望を確信あるものに変えた。国連の援助の下、そしてそれ以前にすでに無数の「当局」により調印、確定されていた多くの認可の下、適格な権限を持つ委員会スタッフにより選抜、監督された複数の研究グループが、期間限定でイラク領土内の考古学的価値が最も高い地域で活動することを許可された。

「大佐殿」エリサはウェブカメラにできる限り近づいて、大きなエメラルド・グリーンの瞳が彼女の望む結果を出してくれることを祈った「仰るとおりですわ」。

カメラの向こうの相手に敬意を示すことで、心証をよくすることができることを、彼女は知っていた。

「でも、あともう少しなのです」

「何がもう少しなんだね?」と大佐は椅子に座り直し、デスクにこぶしを乗せて、苛立たしげに言った。「もう何週間も同じ話の繰り返しではないか。具体的な結果を出してくれないことには、これ以上の支援は無理だ」

「今夜、夕食をご一緒する光栄に預かれましたら、その折に再度のご検討に値するものを喜んでお見せします。いかがでしょう?」

美しい微笑で白い歯がこぼれ、長いブロンドの髪を手でかき上げた。大佐を説得する自信があった。

大佐はしかめ面をして怒りの表情を保とうと努めたが、それでもこの申し出をはねつけることはできないと自分でも分かっていた。エリサには常に好意を抱いていたし、二人で夕食を共にするという考えにはそそられた。

四十八歳という年齢にもかかわらず、大佐にはまだ充分に男性としての魅力があった。たくましい体つき、彫りの深い顔立ち、短く刈り込んだ白髪混じりの髪、鮮やかな青い瞳から注がれる決然たる眼差し、さまざまな話題で談笑できる幅広い知識、そして、制服の高官としての疑う余地のない魅力により、彼は依然として「興味深い」男であった。

「いいだろう」大佐は鼻を鳴らした。「しかし、今夜こそははっきりとした成果を見せてもらおう。そうでなければ、今すぐ帰りの荷造りをはじめたほうがよかろう」できる限り厳然たる口調で言ったつもりだったが、どこか甘さが匂うのは否めなかった。

「八時までに支度をしたまえ。ホテルに迎えをよこそう」大佐はさよならを言わずに通信を終わらせた。

ああ、急がなくちゃ。暗くなるまで数時間しかないわ。

「ヒシャム」エリサはテントから顔をのぞかせて助手を呼んだ。「チームメンバー全員をかき集めて。できるだけ多くの人手がいるの」

発掘現場までの数メートルを足早に歩くと、背後で一陣の砂埃が舞った。数分後にはエリサを取り囲んでチームメンバー全員が集まり、指示を待っていた。

「あなたはあの角のほうの砂を取り除いて」一番遠く離れた石の面を指さして、指示を飛ばす。「あなたは彼を補佐して。気をつけてね。これが私が思っているとおりのものだったら、この現場を立ち退かずにすむかもしれないわよ」

宇宙船シーオス - 木星の軌道を航行中

小型だが快適な球状の船内移動モジュールが秒速約十メートルの速度で第三コンジットを走行していた。その先に、アザキスの旅の連れ、ペトリが待つ区画の入口がある。

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